上の進化の図を見てください。私たち人類は直立歩行をするようになったことで、脳や骨格に変化が起こりました。 10万年前の旧人と私たちの一番の違いは、あごの前方部分の長さ(a)が短くなり、垂直方向の高さ(b)が増加したことがわかると思います。 ゴリラやチンパンジー、あるいは原人などは口元が出っ張っていますよね。
それに対して現代人は口元が引っ込んだ代わりに顔の長さが増加しています。このことによって、私たち現代人は「口の奥の方に親知らずが生えてくるスペースが全く無い」という状況になってきました。
これをディスクレパンシー(不調和)と言います。
つまりスペースが無い口の奥の方に、親知らずが生えてこようとする事によって色々な弊害が起きてくるということです。 親知らずといっても、実は8才~9才頃にはもう親知らずの赤ちゃんが出てきていて、6才臼歯の次の7番目の歯が生えてくる頃から、「悪さ」を始めます。
親知らずが後ろから押してくる事によって、歯が部分的にアーチの内側や外側に飛び出しています。
親知らずが後ろから押しながら、無理に生えようとしてくることによって、歯が伸びてきています。
上のレントゲン写真をご覧ください。親知らずが無理に生えようとすることによって、右側では明らかに左よりも歯が伸びてきてしまっています。また、左側では歯が伸びる代わりに手前の方に傾いてきているのが分かると思います。(左側の親知らずは抜いてありますが、以前はありました。抜いたからといって傾いた歯が元に戻る事はありませんが、これ以上は動かなくなります)この様な左右の歯の高さの違いは、アゴが左右にずれる一番の原因となります。
親知らずが後ろから押しながら、無理に生えようとしてくることによって、歯が前の方に動いてきています。親知らずが発生して成長し、お口の中に生えてくる過程で、・歯が手前に傾いたり・必要以上に伸びたり・本来の位置より内側や外側に移動する事がお分かりいただけたでしょうか?
今までの矯正学ではこのディスクレパシー(不調和)という考え方は、6才臼歯より前方の前歯だけで、水平面的、2次元的にとらえられてきました。そのために、親知らずは無視して安易に小臼歯を抜き、歯を傾ける形でつじつまを合わせる、つまり、前歯の「見た目」だけをきれいにする治療が公然と行われてきました。
けれども、ちょっと考えてみてください。7~8ミリしかない小臼歯を抜いて矯正した後に、10~13ミリもある親知らずが生えてきたら、どうゆうことになるかを?
そうです、またもとの状態に向かって後戻りが始まります。
小臼歯を抜いて矯正した患者さんで、後戻りが非常に多い理由の一つはこれです。
けれども、逆に考えて大きな親知らずを抜いて、 傾いた歯を元に戻して矯正していったら・・・そうなんです。こんな簡単なことなんです、理論は。(実際の治療は簡単ではありませんよ・・・)
現在、新しい治療方法として、9~10才ぐらいで親知らずを抜く治療を行うことがあります。 この時期の親知らずは柔らかく浅い所にいます。また歯の根も無く小さいので成人と比べて抜くのが楽になる可能性があります。またこの時期に親知らずを抜いておけば、矯正治療をする際にも有利になる可能性があります。
自然に調和した、美しい歯並び
小臼歯を抜いた場合より、治療期間の短縮が期待できます。
顎関節症になる心配がなくなる・顎関節症の改善
虫歯になりにくくなる、歯周病の改善が期待できる
咬み合わせが原因の肩こり、頭痛などが治る
「いびき」や「鼻づまり」などが、改善されることが多くなる
歯を抜かない矯正治療 自由が丘 金子歯科医院